訳出の方針
ここに示している建設法典の訳について、「他の訳文と違うようですが、改正の影響でしょうか」という質問をいただきました。検討したところ、「原文は一緒だが訳文は違う」ことがわかりました。このような違いが生じた主な原因は2つあります。一言で言うと、私が「原文に忠実な訳」を目ざしたための違いなので、そのポイントを説明したいと思います。
- ドイツ語を学んだ方はご存じと思いますが、 "sollen" は英語の "should" にあたり、「すべき」という意味で、 "muessen" は英語の "must" で、「しなければならない」とか「必要がある」と訳されます。建設法典には "sollen" が多く使われていますが、ドイツでは「建設法典の "sollen" は "muessen" と理解せよ」と言われています。
そこで問題になるのが、どう訳すかです。"sollen" を「しなければならない」と訳す方もいらっしゃるようですが、私は訳としては "sollen" のまま、つまり「すべき」としております。だから、私の訳をご覧になる方は、「すべき」を「しなければならない」と理解して下さい。
これに似た問題が "sein (ist) ... zu" の扱いです。これは受身の可能または必然なので、日本語訳は、可能の場合は「されることができる」、必然の場合は「されなければならない」ということになります。厳しく「されなければならない」と訳される場合も多いようですが、そうすると、"sollen" を「すべき」と訳したことと釣り合わなくなってしまいます。いろいろ悩みましたが、日本でも、行政に義務を課す場合に「ものとする」という表現が用いられることがよくあるそうなので、「されるものとする」と訳すことにしました。
- もうひとつの大きな違いは、句読点の扱いです。ドイツ語を学ばれた方は、文の長さにうんざりしたことが何回もあるはずです。文を切って理解し易くするのが「いい訳だ」と言われています。
ところが、ここに問題がひとつあります。それは、ドイツで条文を引用する際は、「第○条第○項第○文」として引用することが慣習となっていることです。文を区切って訳してしまうと、「第3文」だったところがいつのまにか「第5文」などになり、調べる際に混乱して、条文が誤解される恐れもあります。
こういうわけで、私は「ピリオドのあるところだけを句点にして、,(コンマ)、:(コロン)、あるいは ;(セミコロン)では句点を打たない」こととしました。こうすると、訳文が複雑になり、文の前後を逆に訳したりするような結果にもなってしまいます。それでも、ドイツの文献を直接調べる方のいることを考慮し、方針を貫きました・・・実は、私もドイツ文献を調べる者の一人です。だから、ここに示した訳は「自分のため」という要素も入っていると思います。
とくに日本と違うのは、項の下にある「号」です。日本では「第1条第5項第3号」となりますが、ドイツ建設法典では「第1条第5項第2文第3号」など、号の前に「第○文」が入るのが原則となっています。
こういうわけで、私の訳は一般の方にはわかりにくくなっているかもしれません。もし「意訳版」を作ろうと思う方がいらっしゃれば、お知らせ下さい。互いにリンクを引き、協力してドイツ理解を進めましょう !
(1999.10.15/2004.06.03修正)