第14条(建設、運輸、運転及び係員に関する規定)
シュテーデルシューレの正式名称は,'Staatliche Hochschule fuer Bildende Kuenste -Staedelschule-Frankfurt am Main',すなわち邦訳すると,「フランクフルト国立造形芸術大学シュテーデルシューレ」となりますが,正確にはヘッセン州立の芸術大学です。シュテーデルというのは創立者の名前(Johann Friedrich Staedel)からきたもので,学校はシュテーデル美術館(フランクフルト市立美術館)付属の芸術家養成所として1817年に創設されました。所在地はマイン川のほとりのシュテーデル美術館と同じ街区の南側で,こじんまりとした小さな校舎です。95年ごろまで建築科長をつとめていたPeter Cook(アーキグラムで有名なあの人です)が改装したガラス張りのメンザがなかなかいい空間です。
詳しい歴史とかは省くとして,現在は,絵画,彫刻,実験フィルム,建築の四学科からなり,全教授数約10名,学生数は各学科約20名程度ずつというたいへん小さな学校です。というか,学校とはいうものの,その実体は,各科にいる独立した芸術家たちの個人的なスタジオの集合体というべき体制なので,日本的な大学とは全く異なる組織です。特に絵画,彫刻,実験フィルムの各クラスは,学生は5年間在籍することができますが,修了したからといって特に何の学位もディプロマももらえるわけではありません。つまり伝統的な芸術家修業の仕組みが公的機関化したもの,とでもいうべきでしょうか。現在の体制は,まず学長がKasper Koenigという,十年の一度の国際現代芸術展'Skulptor Projekte Muenster'のキュレーターを務める,芸術関係者ならだれでも知っているドイツ芸術界のドンです。彼の力もあってすごい芸術家たちがドイツ内外から呼ばれて各科の教授陣に名前を連ねており,デュッセルドルフ,ベルリンの芸術大学と並んでドイツの重要な芸術家養成機関のひとつとなっています。
四学科のうち,建築科だけは数年前に,いわゆるグローバル・スタンダードにのっとって学校らしくしようという主旨で,2年間のディプロマ取得コースに改編されました。シュテーデルシューレの建築コースは,いわゆるポスト・グラディエート・スクールにあたり,ドイツのUni,HochschuleあるいはFachhochschule以上の学校(日本の大学なら学部)を出ていないと入学できません。ドイツの学制は日本と異なっているので単純に比較はできませんが,日本でいえば大学院レベルということになります。ただし,アメリカや日本流のマスターやドクターというような学位ではなく,シュテーデルシューレのディプロマがもらえます。教授陣は,建築科長のEnric Miralles(バルセロナの建築家),Peter Cook(ロンドン)を中心に,ゲストとして例えば98年夏学期はMark Wigley(プリンストン大の建築理論家),Thomas Wiesener(コペンハーゲンの建築家),Cecil Balmond(オヴ・アラップの構造設計家)が教えに来ていました。アシスタントのKarlをのぞいてドイツ人はいませんが,これは内外を問わずに人選をした結果ということであり,建築科のコンセプトが国際的な水準を目指していることがわかると思います。一学年約15人程度いる学生も,ドイツ人の割合は約半分から6割(年によってちがう)で,残りはアメリカ,オーストラリア,ルーマニア,日本など世界各国からきています。したがって学校のなかでの言語は英語が主ということになります。基本的にはデザインスタジオ中心の学校なので,学生は個々に,学期ごとに何らかのプロジェクトを制作していくことになります。なお,学費はタダが常識のドイツではありますが,建築科ではディプロマ取得コースへの改編に伴って学費をとるようになりました。一学期1000マルクですから,2年間で4000マルク,他の学校にくらべれば信じられないくらい安いのですが。