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福島大学 渡辺晃一

4. dessin「線」の表現の西洋の史的背景

 デッサン、「素描」としてのdessin は「線を引く」と同時に「輪郭線」という意味も含まれる。dessineという言葉では、「輪郭のくっきっりしたデッサン」、動詞になると「(線を重んじて)描く、(図面を)引く、模様をかく」、さらに「(作品の)構想を描く、輪郭を浮き出させる、(形を)かたどる」という意味も連なる。

 本節ではこのようなdessin の意味がどのように形成されたかを通して、西欧の「絵画」観をさらに明確にしていきたい。dessin のもつ背景を歴史的に捉えることが、paintingという語との差違を明確にする上で手綱になると考えたからである。

 dessin は、”Disegnar "というイタリア語を語根としている。Disegnarは14世紀頃、「ものの形をきちんと描く」という意味の動詞で使われ、その名詞にラテン語の”Disegno”があてがわれていた。この14世紀末、「デッサン」の重要性を最初に説いた者と言われるチェンニーノ・チェンニーニの著『芸術の本(Il livro dell Art )』が出された。チェンニーニの「デッサン」は前述の”Disegno”の意味で使われている。

 一方、レオナルド・ダ・ヴィンチの「素描論(ディゼーニョ論)」は、チェンニーニの理論を下敷きにしたとも伝えられている。しかしダ・ヴィンチは次のように記述している。

「物体と物体を区切る線は想像上のものでしかない。」

 ものともの、物体と空間との境界を「輪郭線」で描くのは、人間の認知過程で明るさや色彩の差が「線」のように感じるからである。ダ・ヴィンチは、デッサンに普遍的な生理現象が介在していることを示した。「輪郭のくっきっりしたデッサン」は「想像上の描線」である。デッサンに「輪郭」という意味が含まれ、フランスで「ものの輪郭を描く」の動詞に“Designer ”という言葉が用いられたのは、1529年頃、ダ・ヴィンチが没して10年経った後である。

”Designer "は1552年には”Dessigner " となり、1556年には描くことと、構成することの意味で用いられた。1771年には、”Desseigner "または ”Dessigner "の綴りとなり、1864年には紙の上に事物を描く意味で ”Dessigner "の綴りがある。その後 ”Dessign"という名詞が生まれ、現在のような幅広い解釈が含まれるようになっていったと考えられる。)

(出典『Tresor Langue Francaise 』、Centre national de la recherche scieentifique , 1979)


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