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【風力発電機】
2年前、ドイツを訪ねたとき、至る所に「Windanlage」(風力発電機)が設置させていることに大変興味を持った。知人にその理由を尋ねたところ、「戦後、緑の党(die
gruene)の勢力拡大に伴い、環境破壊の問題(大気汚染、地球温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、そしてダイオキシンなど)が常に国民の間で議論されてきたことや現在の主要なエネルギーである石炭や石油が近い将来枯渇してしまうといった危機感などから、次世代のエネルギー開発への国民の支持と期待が近年とくに高まっている」ということであった。スポーツとは全く無関係な話のようであるが、この次世代という言葉が今、妙に気になっている。
「次世代」つまり、これからの子どもたちのスポーツ環境に思いを馳せた場合、少子化、学校週5日制と社会構造が時々刻々と変化していく中で、もしこのままの状況であったとすれば、それは大変なことになりはしないか。ヨーロッパにおいて、次世代エネルギーの開発が今まさに行われようとしていることと同様に、わが国においては、次世代の子どもたちのスポーツ環境の整備に早急に着手しなければならない。ドイツ各地に次々と設置されている「風力発電機」をわが国のスポーツシーンの中に置き換えた場合、それは、「総合型地域スポーツクラブ」ではないかと思ってる。
【1.総合型地域スポーツクラブと子どもたち】
わが国のスポーツは,主に学校を中心に行われてきた。そのため、学校を卒業してしまうとスポーツに接する機会がめっきり少なくなる。生涯を通してスポーツをすることが非常に困難な状況、それがわが国のスポーツの悲しい現状である。
では、こうした状況を改善し、誰もが、いつでも、どこでも、生涯を通してスポーツに親しむことができる環境を、我々は創り出すことができるのだろうか。
今後、多様化・高度化する国民のスポーツニーズに応える新たなスポーツの展開を考えた場合、それは、一人の一生涯という長い期間に対応し、更に次の世代に受け継ぐことができるような「地域に根ざしたスポーツクラブ」の育成を図ることが必要である。
そして、そのきっかけとなるのが、「総合型地域スポーツクラブ」である。
(1)総合型地域スポーツクラブとは何か?
総合型地域スポーツクラブとは、主にヨーロッパ諸国などに見られる地域のスポーツクラブの形態で、地域住民の自主的、主体的な運営により、子どもから高齢者、障害者までを含む、様々なスポーツを愛好する人々が参加できる、総合的なスポーツクラブのことである。
ここで、総合型地域スポーツクラブの魅力のいくつかを紹介しよう。
@種目が多く、それぞれに専門の指導者がいるため、自分に適したスポーツに出会うことができる。
A子どもの時から高齢になるまで長期にわたって同じクラブに所属することができるため、地域住民のコミュニケーションの拠点としての役割を果たすことができる。
B他の学校や様々な学年の子どもたち、または大人たちと一緒にスポーツを楽しむことができるため、自然に社会性やマナーを身につけることができる。
C長期的な視野に立ち、一貫した指導を行うことができるため、バーンアウト(燃え尽き症候群)を防ぐことができる。
D地元で生活する往年の名選手や現役のプロ選手と同じグランドでプレーすることができるため、自分たちのクラブに対する誇りや愛着心が育つ。
Eあくまでも受益者負担が基本であるが、公共性の高いクラブとして、低料金システムを導入することができる。
Fクラブを総合型化することによって、施設使用の調整が比較的容易となり、公共スポーツ施設を効率的、有効に利用することができる。
(財団法人日本スポーツクラブ協会発行のビデオ「総合型地域スポーツクラブを考える〜ヨーロッパの原点に学ぶ〜」を是非一度ご覧下さい。総合型地域スポーツクラブとは何かについてとてもわかり易くまとめられています。)
(2)スポーツ少年団を核とした総合型地域スポーツクラブ
(財)日本体育協会では、平成9年度より、スポーツ少年団を核とした総合型地域スポーツクラブ育成事業をスタートさせた。平成9年度に6地区、平成10年度に9地区、計15地区がこれまで指定を受けている(先月号参照)。この事業の趣旨と目的は、平成9年度と10年度では若干違いがあるものの、概ね次のようになっている。
地域に根ざしたスポーツ少年団を核とし、また、スポーツ少年団が持つ全国的ネットワークとクラブ経営のノウハウを基軸として、異世代の住民もとり込んだ、地域住民一体となったクラブづくりを推進することにより、青少年の健全育成を図るとともに、地域住民の豊かなスポーツライフを推進するため、先導的なスポーツクラブづくりを実践的に実施するモデル事業である。
その目的として、単一種目の少年スポーツクラブから複数種目のクラブへの組織化、中高校生のクラブへの参加の促進と部活動との連携、父母や高齢者により構成される成人スポーツクラブの結成と少年スポーツクラブとの連携、少年スポーツ指導者等有資格指導者の活用によるクラブにおける指導体制の整備等が挙げられている。
(3)転換期にあるスポーツ少年団〜地域でできること、地域がすべきこと〜
スポーツ少年団は、現在、全国に3万5千団ほどあり、団員は、ほとんどが小学生、それも高学年の子どもが大半を占めている。活動種目をみても、ほとんどは単一種目のみを行っている。中・高校生になるとスポーツ少年団へ所属している子どもは著しく減少し、多くの子どもは中学校や高校の部活動に所属するようになる。
このように小・中・高と活動が分断されてしまっているといった問題の他に、現在の小学生を中心とした単一種目型で小規模なスポーツ少年団の場合、「どんな種目をやってみたいのか」、「どんな仲間とスポーツを楽しみたいのか」、「どのレベルを目指したいのか」等、子どもの側の意向が反映されるのではなく、所属する地域(学区)のスポーツ少年団によって画一的・一方的に決められてしまうといった傾向にあることも指摘しなければならない。
今、スポーツ少年団に求められていることは、生涯を通して楽しくスポーツを続けていくことができる地域に根ざしたスポーツクラブへと変革することであり、「地域でできること、地域がすべきこと」の原点に立ち返り、学校−家庭−地域のトライアングル・システムに基づいたクラブづくりを目指していくことであろう。
そうした意味で、現在、日本体育協会が取り組んでいる「スポーツ少年団を核とした総合型地域スポーツクラブ育成事業」に注目し、指定地区の事例などもこの連載の中でお伝えしていきたい。
【2.総合型地域スポーツクラブについて共に考えよう!】
「生涯スポーツの振興とは、幼児から高齢者までの幅広い年齢層を対象としたスポーツ教室やイベントを数多く実施し、その参加者数を増やせばそれでいい」と単純に思い込んでしまっている地域や指導者が少なくない。確かに、スポーツ教室や各種イベントの開催といったいくつかの花を切り取って花束を作った方が手っ取り早く、見栄えはいいものの、それが本当に地域住民の生涯スポーツの定着に結びついているかといえば、はなはだ疑問が残る。また、単に種目を単一から複数に変えたとか、対象者を子どもから高齢者までに拡げただけでは「総合型」と呼ぶことはできない。
総合型地域スポーツクラブにおいて重要なポイントを3つ挙げるとすれば、@地域住民が自主的、主体的に運営する仕組みをいかに創り出すか、A既存の組織や団体の構造的な問題にいかにメスを入れるか、B世代を越えて長く人々に親しまれるクラブにいかに創り変えるかにかっているといってもいい。
そのためには、まず将来の「総合型地域スポーツクラブ」の中核となる推進母体をつくり、その組織をビルトアップしていく過程で、徐々に同じベクトルを向いている団体(地区体協や体育指導委員、学校運動部やスポーツ少年団、既存の地域スポーツクラブ等)に働きかけ、最終的には「わが町の総合型地域スポーツクラブ」を実現しようといった取り組みへと方向転換を図ることが重要である。
しかし、実際のところ、現体制に限界を感じつつも、一体何から始めれば、総合型地域スポーツクラブをつくることができるのか、といった具体的な情報が極めて少なく、暗中模索している人が多いようだ。
我々(水上博司/黒須充)は、「総合型スポーツクラブ」を合い言葉に、「住民参加型のクラブはどうつくればいいのか、推進母体はどうするのか、適正な会費はいくらなのか、クラブづくりのビジョンを住民にどのように説明したらいいのか」などについての情報や意見を交換するネットワークづくりを目指して、今年5月に、CLUB
netz(クラブ・ネッツ)を発足した。この活動を通して、人的、組織的、財政的に確立した総合型地域スポーツクラブがこれからの生涯スポーツ振興の柱になることについて、共に考えていきたい。
【3.総合型地域スポーツクラブと大人たち】
近頃ウォーキングがちょっとしたブームになっている。
とりたてて道具や場所を必要とせず、いつでも、どこでも、だれでも気軽に長く続けられるスポーツの代表である。これまでスポーツには無縁だった人々の中にも「自分の健康は自分で守る」「病気にならない身体づくりを」といった動機で始めているようだ。
近年の健康志向の高まりと社会の個人主義化が「数あるスポーツの中でもウォーキングへ」と駆り立てたことは言うまでもないが、単にそれだけではないように思われる。人々は、もはや各種目ごとの暖簾のれんをくぐることを敬遠する傾向にあるのではないだろうか。
つまり、今日のウォーキングブームは、国民が自らのニーズ(健康な身体づくり)に合ったスポーツを主体的に選択し、自主的に取り組み始めた一つの徴候であり、裏を返せば、これまでのわが国のスポーツ環境がこうした「自主的、自発的に日常的な運動やスポーツ活動を身近な場所で行いたい」といった多くの人々の要求には必ずしも応える場ではなかったことも意味すると考えてよい。
わが国では、少子化・高齢化が加速度的に進行し、かつてない「逆ピラミッド型」の社会を形成しつつある。
今回は、子どもに焦点を当てて、総合型地域スポーツクラブのあり方について考えてきたが、そこだけに目を奪われてしまってはいけない。あくまでも子どもも大人も誰もが気軽に参加できるスポーツクラブであり、様々なニーズに対応した指導者制度の再構築であり、人々に新たなライフスタイルを提案するクラブをデザインしてほしい。子どもたちが笑顔で生き生きとスポーツを楽しみ、人々もクラブライフを満喫している、そんなスポーツシーンを思い描きながら、あなたの町でも総合型地域スポーツクラブづくりの実現に向けて取り組んでみませんか。
<参考文献>
1)「生涯スポーツ団体等による生涯スポーツ活動の核となるクラブづくりの在り方に関する研究開発−総合型地域スポーツクラブ育成−」日本体育協会,1998.3
2)「スポーツ少年団育成事業報告書」日本体育協会日本スポーツ少年団,1997
3)「CLUB netz 総合型スポーツクラブ100」黒須 充,水上 博司,CLUB netz 第2号,1998.8
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