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SSF笹川スポーツ財団発行『スポーツ・フォア・オールニュース Vol.27』(1998年11月号)

スポーツ先進国 ドイツに学べ! 
第1回 ドイツのスポーツクラブ アクセル・ベッカー

 
 ドイツでは、2,500万人を超える人々が85,000ヶ所にも及ぶスポーツクラブのいずれかの会員となっています。フィットネススタジオ等の商業的なスポーツサービス提供者の参入による競争の激化にもかかわらず、スポーツクラブの会員数は増加しつづけ、新しいスポーツクラブが次々に設立されています。
 では、なぜドイツでは、地域のスポーツクラブがこのようにダイナミックな発展を遂げ、高い社会的評価を得ることができたのでしょうか。
 その問いに対する第一の答えは、スポーツクラブの会員になるために、それほど高い費用を必要としないことであると言えるでしょう。会費の安さが“スポーツ・フォア・オール”の不可欠な前提条件なのです。そのため、スポーツクラブにたくさんの子供たちや青少年が加入していることもとりたてて驚くべきことではありません。
 第二の答えは、スポーツクラブが至るところに存在するということです。大都市のみならず小さな村にさえもあるのです。
 そして第三に、スポーツクラブの提供するサービスが実に広範囲にわたっていることを挙げなければなりません。スポーツに関連した身体活動のほとんどは、スポーツクラブによって提供されていることはもちろんのこと、スポーツクラブが、スポーツ以外にも、フェスティバルや演奏会、旅行といった実に多種多彩な余暇活動を提供していることも忘れてはなりません。そして、それゆえにスポーツクラブは、地域における社会的・文化的生活の基盤として、確固たる地位を築いているのです。
 ただし、『典型的なスポーツクラブ』といったものは存在しません。1〜2種目程度のスポーツしか提供しない会員数30名程度の小規模なクラブから、数千人の会員を擁し、固有のスポーツ施設を持ち、何十種類ものスポーツを提供する、150年以上の歴史を有する大規模なクラブまで、その規模や形態は様々です。
 規模や組織、提供するスポーツ種目に違いはあるにせよ、これらのスポーツクラブはどのような役割を果たし、どんな共通点を持っているのでしょうか?
 スポーツクラブの最も重要な資源は、エーレンアムトリッヒ(名誉職)の存在です。つまり、会員により、自発的に、無償で行なわれるボランティアとしての協力活動です。スポーツクラブは会員によって民主的に選出された名誉職としての役員会によって運営されています。この役員会(およそ5〜10名で構成される)は、クラブのさまざまな決定権を持ち、管理運営を引き受けます。更に、この役員会は、各部門(これらは多くの場合、提供されるスポーツ種目に対応している)で同様に選出された代表者からも協力を得て活動しています。
 
 誰でもスポーツクラブの会員になることができます。クラブは会員の自主的な運営により成り立っていますが、会員としてのわずかな会費を支払うことを別とすれば、会員であるために果たさなければならない義務は何ひとつ発生しません。そしてその月会費はおおよそ映画館の入館料程度のものなのです。
 実際にスポーツの指導を担当する人は、スポーツ連盟によって養成された資格を持った指導者です。もちろん、その多くは本来の職業を持ちつつ、ボランティアとして活動している人たちです。彼らはその活動に対してわずかな報酬・手当を受け取りますが、これは多くの場合、自己の出費を補填する程度のものにすぎません。
 施設に関していえば、固有のスポーツ施設を有しているクラブはわずかに過ぎません。スポーツ活動は市町村からクラブに無料で貸与される公共のスポーツ施設を拠点として行われています。
 ドイツのスポーツクラブには、これまで述べてきたことの他にもう一つ重要な役割があります。それは、公益に資する社会政策的な任務を遂行しているという点です。つまりスポーツクラブは、もしクラブが存在しなかったら国や地方自治体が別の形で果たさなければならなかった役割を補完しているのです。そうした役割とは青少年の健全育成、国民の健康保持、あるいは失業者や高齢者といった社会的弱者に対するケアといったことです。したがってドイツのスポーツクラブは、単なる『スポーツサービス提供者』を遥かに上回る社会的な存在といえるでしょう。

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