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SSF笹川スポーツ財団発行『スポーツ・フォア・オールニュース Vol.28』(1999年1月号)

スポーツ先進国 ドイツに学べ! 
第2回 子どもとスポーツクラブ アクセル・ベッカー

 
 ドイツでは、青少年の40〜50%が地域のスポーツクラブに所属して、スポーツ活動を行っています。今回は、子どもがいかにしてスポーツクラブに参加するのか、またはしないのかについて、3つの典型的なパターンを紹介しましょう。
 まず第一のパターンは、両親がスポーツクラブに所属している場合です。そうした子供は、2・3歳の頃にクラブ主催の親子体操教室などへの参加を通して、ごく自然な形でスポーツクラブと出会います。また、かなり早い時期から特定の種目を始めるケースも多く、その中で才能を見出された子どもの中には、将来、国を代表するような選手に育っていくことも珍しくありません。しかし、それ以外の子どもたちにとっても、スポーツクラブは、学校とは違った魅力を持つ存在として、多くの支持を得ています。
 第二の参加パターンは、学校におけるスポーツとの出会いから始まります。昨今の子どもを取り巻く遊び環境の悪化や運動能力の低下を補うため、通常、週3時間の体育の授業が行われています。ここでスポーツを好きになった子どもは、ほぼ間違いなく、スポーツクラブに入会し、生涯スポーツへの第一歩を踏み出します。また、最近では、スポーツクラブから学校に対して、施設の共同利用、指導者の派遣、プログラムの開発など積極的な働きかけを行っています。こうした学校とスポーツクラブの長期的なパートナーシップによって、新たなメンバーを獲得できるとともに、才能ある選手の発掘・育成にもつながっています。
 第三のパターンは、いわゆるスポーツは苦手だという場合です。子供自身も運動神経がないと自認し、サッカーのメンバーを決めるときには、いつも一番最後にしか選ばれず、体育の時間は仕方がないからやっているだけで、スポーツクラブに入ろうなどとは、夢にも思いません。ただし、この場合、“運動神経がない”ことよりもむしろ、スポーツクラブに対する世間一般のイメージ、つまり、スポーツクラブとは運動が得意な人のためにあるといった世間一般の考え方に少なからず影響されているように思われます。
 これからのスポーツクラブは、運動能力に優れた、上達の早い者だけではなく、その「周辺」に位置する子どもたちとの関わりを抜きにして、未来を展望することはできません。足が速いから、運動が得意だからスポーツクラブへ入るのではなく、「スポーツが好きだから入れるクラブ」へと方向転換を図ることが大切です。
 さて、青少年のスポーツクラブを統括するドイツスポーツユーゲントは、青少年の教育活動の中でも極めて高い組織率を誇っています。しかし、そのすべてが順風満帆にいっているわけではなく、多くの子どもたちは、15歳から18歳の間に、「この先も続けるべきか」といった最初の大きな岐路に立たされます。学校のこと将来のこと、または友人などに影響され、大部分の子どもたちのスポーツ経歴は、まずこの年齢でピリオドを打ちます。若者の価値観の多様化、個別化傾向、メディア社会への埋没など他にもいくつか理由を挙げることができますが、こうした思春期の「クラブ離れ」をいかにくい止めることができるかが、我々に課せられた重要な課題といえるでしょう。
 いずれにせよ、ドイツにおけるスポーツクラブとは、あらゆる人々の自由意志に基づいたスポーツ及び文化活動を公的に支援する社会的な機関です。そのため、国や自治体から財政的な援助を受けることができるわけですが、決して行政主導型ではなく、あくまでもボランティアの役員や指導者を中心とした住民の自主運営によって成り立っていることを忘れてはなりません。
 今回は、子どもとスポーツクラブとの出会いを中心に紹介してきましたが、人々とスポーツとのかかわり方は、性・年齢・目的によって様々です。たとえ、いったん離れたとしても、また戻って来て、自分のペースで楽しむことができるような、そんな魅力あるクラブこそが、これからのスポーツクラブの姿だと考えています。

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