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SSF笹川スポーツ財団発行『スポーツ・フォア・オールニュース Vol.29』(1999年3月号)

スポーツ先進国 ドイツに学べ! 
第3回 スポーツクラブと経営感覚

 
 
利益を追求する企業と非営利的な団体であるスポーツクラブとは、第一印象で判断するよりも、多くの共通点を有しています。商業スポーツ施設の進出や人々の価値観及びライフスタイルの変化に伴い、スポーツクラブは今、変革を求められており、企業と同様に競争原理に基づいた経営感覚が不可欠の時代を迎えています。ただし、現状を報告すれば、多くの小規模なスポーツクラブでは、この見方を受け入れようとせず、いまだ旧態依然の体制のまま、限定された会員間の互助グループといった感覚から抜け出せずにいます。
 もし、誰かがこうした時代の変化にさえ気づけば、身近な企業に倣って、スポーツクラブを運営しようと考えるのは当然のことと思われます。しかしながら、必ずしも企業のマネジメントやマーケティング手法を完全に模倣することがうまくいくとは限りません。なぜならば、ほとんどのクラブは、無給のボランティアを中心に、限られた時間の中で運営が行われているのが実情だからです。
 今回は、こうした様々な制約の中で、「成功するためのスポーツクラブのマネジメント」について、いくつかの視点から提案してみたいと思います。
【目標設定の具体化】
 企業や競技スポーツにおける目標は、「利益」または「リーグ優勝」など、比較的容易に定めることができますが、市民スポーツにおける目標を的確に表現することは、とても難しいように思われます。繰り返し唱えられている健康、楽しみ、社交、コミュニティの形成、あるいはほとんどのクラブの規約に明記されている「生涯スポーツの振興」といった目標は、具体性に欠け、審査することができません。市民にスポーツが浸透しているかどうかを測るため、何をもってその目標を達成したといえるのか、具体的な目標および達成審査基準を明確に示さなければ、それを受けて措置を講ずるといった具体的施策に結びつきません。この目標設定と実践の循環システムを確立することが、多くのクラブにとって課題となっています。
【財政基盤の確立】
 税法、保険に加え、市町村における補助金の問題は複雑化する一方であり、真にエキスパートの知識が求められています。この場合、本職における経験が生かせる無給の職員を従事させたスポーツクラブは有利といえます。たとえ、いいアイデア・プランがあったとしても、資金がなくては実行に移すことは困難です。確かな財政基盤を築くこと、これがスポーツクラブの運営を支える前提条件であることは言うまでもありません。
【渉外部門の強化】
 所轄となる行政機関を説得することも重要です。もし、個々のクラブでの対応が難しいようであれば、むしろ声を合わせて訴えるなど、連盟に属する全てのスポーツクラブの協力と連携が必要です。また、クラブの財政基盤を安定させるためにも、スポンサーの獲得という「渉外」行動が重要な役割を果たすようになってきました。
【広報の役割】
 各年代のニーズにあったイベントの紹介や最新の情報を定期的に提供することが、会員のクラブライフの充実や新規会員の獲得につながります。また、こうした積極的な広報活動は、潜在的なスポンサーに対して、クラブに対する関心を喚起する役割をも果たすことになります。
【適材適所の人事計画】
 スポーツクラブの長期にわたる成功には的確な人事計画が不可欠です。これには適切な役職の明示と任務・責任の分担、さらには充分な専門教育と高度な人材育成といった未来に向けたスタンスが要求されます。目標設定、財務、渉外、広報、いずれも有能な人材が確保できるかどうかが成功の鍵を握っています。
 
 現実には、専任のスタッフに恵まれ、財政・広報部門が盤石で、あまり苦労せずにスポンサーを獲得できるようなクラブは少数であり、むしろ、一人で何役もこなさなければならないようなクラブの方が一般的といえます。しかし、その家族的なメンバー構成を活かし、クラブ運営に参画することが「負担」ではなく、むしろ「楽しみ」として感じられるような雰囲気づくりの中で役割意識を持たせることが重要なのではないでしょうか。他のクラブにはない独自性を打ち出すには、古い殻を破り、新しいものを取り入れていくといった経営感覚を持つことが求められています。「競い合いがクラブの質を高める」ことを忘れてはなりません。

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