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(財)日本体育協会:「指導者のためのスポーツジャーナル」1999年6月号

総合型地域スポーツクラブを後方支援する広域スポーツセンターの役割


【我が国におけるスポーツクラブ支援体制】
 文部省では、平成11年度予算において、生涯スポーツ関係の事業をまとめた「スポーツライフ21プロジェクト」を打ちだし、新規事業として「広域スポーツセンター育成モデル事業」(全国5ヶ所、3億957万1千円)をスタートする。

 今回は,総合型地域スポーツクラブを,一中学校区から市町村へ,市町村から県へ,県から全国へと展開するための組織づくりにとって、重要な鍵を握る「広域スポーツセンター」の役割に焦点を当てて紹介したい。

 ここに仮に素晴らしい総合型地域スポーツクラブができあがったとする。しかし、単独では活動の幅を広げるには限界があり、長い目で見た場合、魅力あるクラブとして存続することは難しいだろう。クラブ員のレベルアップや様々な要求に応えていくためにも、クラブ同士の横のつながり、そしてそれらを統括する縦のつながりが必要不可欠になってくる。

 図1に示したように,文部省の「スポーツライフ21プロジェクト」を主軸に,都道府県が広域スポーツセンターの育成を担当し,広域スポーツセンターが総合型地域スポーツクラブの育成を担当する体制へと移行することによって,誰もが身近な場所で気軽にスポーツを楽しむことができる、生涯スポーツ社会の実現につながるものと思われる。

 このように具体的な全体像が見えてきたことで、それぞれの立場でどのような役割を果たせばいいかが明瞭となり、総合型地域スポーツクラブへの取り組みも一段と活発化することが予想される。

 総合型地域スポーツクラブへのニーズは確実に高まっている。しかし,住民や担当者にとって,いいことだとはわかっていても,どのように計画的に作ればいいのか,そこに至るまでのプロセスがよくわからないといった声が一箱的である。そうした問題点の解決を図り,総合型地域スポーツクラブの設立・運営を後方から支援し,地域スポーツ施設のネットワークの中核となる機関が広域スポーツセンターである。

【広域スポーツセンターの役割】
 地域のスポーツ推進を支援する広域スポーツセンターの中心的役割は,地域のだれもが主体的に参加し,活動することができる総合型地域スポーツクラブの創設と育成にあるが,その波及効果として,スポーツ参加・活動の促進,地域スポーツ文化の創造,コミュニティネットワークづくり,地域スポーツニーズの把握と振興計画,地域における経済的効果なども期待することができる。

(1)総合型地域スポーツクラブ育成支援(図2参照)
住民の自主運営と受益者負担の精神に基づいた総合型地域スポーツクラブの育成支援が主要な業務である。
 @クラブ組織づくり:クラブのNPO法人化,クラブ運営の中心となるボランティアの発掘と  組織化
 Aクラブ施設運営:スポーツPFIの活用によるクラブハウスの建設や活動拠点施設の充実 
 B財務運営:助成金申請,スポンサーシップの獲得への助言
 Cマーケティング:スポーツクラブの振興とアクションプランの作成
 D大会・イベントの計画と運営:活動計画と運営のあり方,国際交流促進 
 Eスポーツ指導者研修:クラブマネジャーや実技指導者等の研修
 Fスポーツ情報提供:圏内のスポーツ施設,スポーツ医・科学,ボランティア(指導者含   む)の情報

(2)スポーツ参加・活動の促進
これまでスポーツをする機会に恵まれなかった人々と青少年スポーツの活性化が重要な課題となっている。
 @中高年のスポーツ参加率の向上:健康体力づくり,生活習慣病予防,健康保険医療費削   減,生きがいづくり
 A女性のスポーツ参加率の向上
 Bファミリースポーツ促進:個人参加型のクラブから家族参加型のクラブへ
 C生涯スポーツ参加率の向上
 D健康とスポーツライフに関する生涯学習促進
 E子どものスポーツ教育支援:地域の学校と連携
 Fスポーツタレントの発掘と一貫育成

(3)地域スポーツ文化の創造
 @地域のスポーツ需要に適したスポーツ参加活動の創造と育成
 A複数のスポーツ組織・団体・個人の統合
 B文化活動とスポーツ活動の総合的促進
 C青年団,婦人会,老人クラブなど地域の既存クラブ組織との連携

(4)コミュニティネットワークづくり
 @地縁づくり:新しい地域ネットワークづくり,スポーツを帳したボランタリーコモンズの  形成
 Aボランティアの育成:ボランティア精神の育成,住民の自発性に基づいた社会づくり
 B地域の活性化

(5)地域スポーツニーズの把握と振興計画
 @地域住民のスポーツニーズの把握
 A地域住民のスポーツ参加率の把握
 B地域住民の体力・運動能力の把握
 C地域スポーツ環境の把握:実技指導者数,クラブマネジャー数などの把握,スポーツクラ  ブ数,スポーツ施設数,夜間照明設備などの把握
 D地域スポーツ振興計画(5年,10年計画)の作成
 E戦略的振興計画に基づく総合型地域スポーツクラブの育成

(6)地域における経済的効果
 @地域医療費の節減:健康保険医療費削減
 Aスポーツ関連支出の増大

【広域リーグの可能性】
 東京都文京区,豊島区にある10の高校と1つのクラブ,及び文京区中学3年生選抜チームを含めた計20チームが1部8チーム,2部6チーム(2ブロック)に分かれて行っているリーグ戦(帳称DUOリーグ)の試みは広域圏のスポーツ推進体制を確立する上で,とても参考になるシステムである。

 たとえば,広域スポーツセンターがカバーしている地域のクラブと学校から複数のチームを出して、年齢やレベル毎に、土曜日は試合の日とする地域リーグ、対抗戦を企画する。「勝っても負けてもまた来週,試合ができる」といったリーグ戦、対抗戦を行うことで、日々の活動の目標となるとともに、学校運動部から補欠をなくすことができると思われる。

 ただし、中体連、高体連の試合はこれまで帳り行われるため、併存型の年間活動計画を立てる必要があるだろう。将来的に、「補欠ゼロ」の地域リーグは県大会までとし、それ以上の地区、全国大会には選抜チームが参加するようなシステムに変えていくことが必要ではないだろうか。結旺的に、地域の青少年へのスポーツ教育力は強化され、青少年のスポーツ参加率は向上し、かつ競技力は向上すると思われる。

【諸外国における広域スポーツセンター】
 広域スポーツセンターは我が国固有のものではなく、すでに諸外国においては地域におけるスポーツ推進機能として存在している。オーストラリアでは、「スポーツアカデミー」として各地域に総合的トレーニングセンターが存在する。ここでは、専門的なトレーニング施設とコーチだけではなく、ドーピング教育も含めた青少年競技者に対するスポーツ教育、スポーツ科学研究所、スポーツクリニックが併設されている。ドイツでは現在約20箇所のスポーツシューレがある。ここでは、本格的な代表チームのトレーニングをはじめ、ユース選手の教育と専門的トレーニングが実施されている。

 ニュージーランドには,ヒラリーコミッションの業務を代行する17のスポーツトラストがある。その一つである「スポーツノースハーバー」を取り上げ,広域スポーツセンターの機能と役割について見てみよう。

【スポーツ・ノースハーバー】
 スポーツノースハーバーの基本的スタンスは,地域のスポーツクラブを設立・運営(マネジメント)することができる人材を数多く育て,実際の普及活動はローカルクラブに任せていこうといった考え方である。スポーツクラブに対する相談窓口の開設,ボランティア指導者の発掘とクラブマネジャーの養成,クラブ間のネットワークの構築などを主要な業務として行っている。

 マネジメント能力に欠け,財務への知識が不足しているクラブに対しては,セミナーへの参加を呼びかけ,たとえば,下の滋真のようなテキスト(ヒラリーコミッション発行「running SPORT」)を活用し,住民自らの手でクラブを運営していくことがひいては地域社会への貢献につながり,助成に値する活動であることを伝えている。

@ボランティアの募集と採用
 (Recruiting and Retaining Volunteers)
Aクラブの事務職員
 (The Club Secretary)
B会議の開き方
 (Managing Meeting)
CマーケティングとPR
 (Marketing and Public Relations)
D基金とスポンサーシップ
  (Funding and Sponsorship)
Eクラブの作り方
 (Club Planning)
Fクラブの資金繰り
 (Managing Money)
Gスポーツイベントの企画
 (Event Management)
Hチームマネジメント
 (The Sports Team manager)

 総合型地域スポーツクラブの設立と運営にとって,質の高いクラブマネジャーを数多く養成することが極めて重要であり,クラブ運営の成否を握っていることなどがとてもわかりやすく記されている。

【まとめにかえて】
 あくまでも、広域スポーツセンターは、総合型地域スポーツクラブを後方から支援する機関であり、運営の主体は各総合型地域スポーツクラブであることを忘れてはならない。

 また,広域スポーツセンターの役割の一つとして,総合型地域スポーツクラブの育成が地域のスポーツ参加率の向上を促し,社会公益性(青少年の教育,医療費の削減,生活環境問題の改善,住民の地域参加の促進,高齢者の生きがいづくり等)に対しても一定の効旺をもたらすことについて,具体的な数値を用いて評価していくことが大切である,更に,資格を有した指導者が活躍する新しい場を創り出すことも期待できる。

 いずれにせよ,地域スポーツ推進体制を整える上で,単なるスポーツクラブ会員の集合化,組織化だけではなく,スポーツ活動推進のためのボランティア参画プログラム,スポーツクラブ運営やスポーツ行事運営に対する助成金体制,クラブクラブマネジャーの育成や研修プログラムを同時に展開することができる広域スポーツセンターは,我が国にとって欠かせない存在になってくるだろう。
<参考文献>

1)工藤敏夫:「豊かなスポーツライフの実現に向けて」,スポーツと健康,1999年4月号,第一法規

2)「文部省委嘱事業・オセアニアのスポーツクラブ」(財)日本スポーツクラブ協会,1999.3

3)中塚義実:「地域におけるユースサッカーリーグの実践報告−新しいスポーツシステムの理念とその影響について−」,スポーツ産業学研究第9巻第1号,1999.3

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