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はじめに
「SHULE UND SPORTVEREIN〜Partner in der Erziehung」(学校とスポーツクラブ〜教育におけるパートナー」。この本の内容を紹介することで、今回のテーマに沿った有益な情報を提供することができるのかもしれない。しかし、今回は、海外の先進事例よりもむしろ、今わが国で徐々に拡がりをみせている「総合型地域スポーツクラブ」と学校教育とのかかわりについて考えてみたい。2002年4月からの学校完全週5日制を目前に控え、地域社会の中にクラブを創ろうとする動きが活発化している今こそ、学校と地域との新たな関係を築く、絶好の機会ではないだろうか。
百聞は一見に如かず
「総合型地域スポーツクラブ」。言葉は聞いたことがあっても、その実体が今ひとつわからない、といった声も少なくない。そこで、「百聞は一見に如かず」、まずは、ある町(人口約8千人)のクラブを訪ねてみよう。
◆双葉ふれあいクラブ(福島県双葉町)
平成12年4月、7つのスポーツ少年団が中心となって設立された。会員数は現在、598名<子ども(中学生以下)217名、大人(高校生以上)381名>、図1より、様々な年代の人々が参加していることがわかる。町外からの会員も62名と全体の10%を占めている。
活動プログラム(表1参照)は、青少年の一貫指導を目指すスクール8種目(主に小中学生)、生涯スポーツ実践の場としてのサークル17種目(子どもから高齢者まで)、そして四季折々のイベントの開催など、「地域に開かれたクラブ」として幅広い活動を行っている。
指導者は、スクール部門33名、サークル部門26名、合計59名である。
わが国のスポーツは、とかく種目や団体、学校といった限られた枠の中で活動するといったスタイルが主流を占めているが、総合型地域スポーツクラブの場合、このクラブのように、種目やチーム、年代の枠を超えた一つのクラブとして、障害者も含み子どもから高齢者まで、誰もが生涯にわたってスポーツを楽しむことができる仕組みとなっている。
私は、次の2つの点で、双葉ふれあいクラブが理想の総合型に近づいていると感じている。
一つ目は、「競技スポーツ」を志向するスクールと「生涯スポーツ」を志向するサークルが、共に協力・補完し合う関係を創り出し、その中で、スポーツ少年団や学校、地域の体育協会や体育指導委員、そして行政等の役割を考えていこう、自分たちの住んでいる地域のスポーツは、学校を含め、地域のみんなで力を合わせて支えていこう、といったスタンスが確立されていることである。
21世紀のスポーツは、学校、企業、スポーツ団体、行政等がそれぞれに役割を分担し、うまく機能してきた。しかし、世紀を迎えた今、それぞれが役割にとらわれるあまり、必ずしも多様なニーズに応えられなくなってきているのではないだろうか。そうした意味で、双葉ふれあいクラブが、それぞれの組織や団体の「垣根」を取り外し、地域と一体となった活動へと方向転換したことは先見の明があったといえよう。
2つ目は、独自のクラブハウスを有し、2名の事務局スタッフ(社会保険にも加入)が、会員の様々なスポーツ活動をサポートするために常勤していることである。
小中学校の体育館やグラウンド、町の体育施設や総合運動公園等の鍵の管理を一括して行っていると共に、クラブハウスにいけば、いつ、どこで、どんな活動を行っているか、といった身近な情報を簡単に入手できるなど、情報の発信拠点としての役割も担っている。
学校とクラブはパートナー
こうしたクラブが身近にあれば、学校にとっても心強いパートナーとなる。冒頭の本の内容も含め、学校とスポーツクラブの連携・協力の可能性についていくつか紹介したい。
@学校とスポーツクラブが共同で行う校内スポーツ大会や地域スポーツフェスタ
A学校を帳したスポーツクラブのプログラム紹介や入会案内
B「スポーツと環境」、「スポーツと健康」、「スポーツと地域社会」といったテーマの講演会の開催
Cスポーツの苦手な子や技術蔓で伸び悩んでいる子など個人差に応じたスポーツ教室の開催
D障害者と健常者が一緒に楽しむスポーツイベントやニュースポーツの紹介
E医師や研究者によるメディカルチェック
F学校とクラブが共同で行う優良プロジェクトの表彰
G学校長とクラブ代表者、体育科教員とクラブ指導者との情報交換会の設定
H子どもの発育発達に応じた適切な指導に関する合同研修会の開催
I学校とクラブの共同利用に伴う施設の整備・充実(助成金の申請と活用)
子どもたちの体力・運動能力が低下し続ける中、学校とクラブ双方が有している資源やノウハウを活用し合うことによって、子どもたちのスポーツライフがより豊かになるとともに、友達や地域の人々との交流を帳した青少年の多様な活動の場づくりとなることは間違いない。
地域と連携した学校運動部
「学校を地域に開く」、「地域で子どもを育てる」といったコンセプトに基づき、いち早く、学校と地域が連携したクラブシステムを考案した愛知県半田市成岩スポーツクラブのような事例(図2参照)もあるが、多くの学校では、いまだ、週5日後の運動部をどうしたらいいのか、その方策についての明確な指針を見出せないままでいるようだ。
特に、受け皿(クラブ)のない地域では机上論で終わってしまい、問題が先送りされてしまう危険性がある。犠牲になるのは子供達だ。学校だけで乗り切ることができるのか、それとも積極的に地域との連携を図るのか、即断を迫られているといえよう。
いずれにせよ、総合型地域スポーツクラブは地域における新しいスポーツ活動の提案であり、学校関係者や既存のスポーツ団体等には自分たちの活動を阻害するのではないかという警戒感もあるのかも知れない。しかし、総合型地域スポーツクラブは、決して「部活不要論」を唱えているわけではなく、学校との緊密な連携の上にこそ成り立つ仕組みであると私は考えている。 現に、市立船橋高校を母体としたクラブチーム「ヴィヴァイオ船橋」(サッカー)のケースなど、活発な運動部活動を土台に、地域の小中学生や高校生、さらには卒業生や地域住民のパワーを結集して、地域スポーツクラブとして立ち上げるケースも、増えていくだろう。もはや一つの学校のことだけ考えている時代は終わったのかもしれない。
21世紀のスポーツ振興施策と学校教育
平成12年9月、文部省(現:文部科学省)から「スポーツ振興基本計画」が告示された。この中でも、総合型地域スポーツクラブの全国展開が中心的施策として示されているほか、運動部活動に関しても、「より一層の充実を図ることが大切である」と明記されている。しかし、ここに示された「部活動」は、従来のイメージとは異なるものであることを確認しておかなければならない。今や、現代社会において、家庭や地域と連携・協力体制をとることは、学校の存立基盤にとって欠かせない要件となっている。それと同時に、部活動においても、地域の指導者との協力、複数校による合同運動部活動の推進、競技志向や楽しみ志向といった多様なニーズへの対応など、新しい観点に立った「部活動像」を描くことが求められてきている。
すなわち、学校における部活動を充実させることと地域におけるスポーツ環境の向上を図ることは、決して対立するものではなく、むしろ、地域の共有財産としての学校を核とした「総合型地域スポーツクラブ構想」を描き、地域との共生を図っていくことが、我が国独自のクラブづくりとして定着していくのではないだろうか。
一貫指導システムへの期待
最後に、学校、企業を中心に発展してきた我が国のスポーツシステムにとって、一番欠落してきたと言われている「一貫指導システム」について触れてみたい。
平成13年4月、福島市初の総合型地域スポーツクラブ「f-Sports」が誕生した。市の中心市街地の空洞化や子ども数の減少に危機感を募らせた住民や指導者が「学区を超えたクラブづくり」を呼びかけ、住民主導でクラブを立ち上げた。その背景には、「一貫した指導システム」への強い期待が込められている。ある指導者の声を紹介しよう。
「私がここ数年、ミニバスケットの指導者をしてきて感じることがあります(他の種目もきっと一緒だと思います)。小学校三年生から六年生まで、一生懸命バスケットをやってきた。ところが卒業と同時に三年間の線が「プツン」と切れてしまいます。それをサポートしてきた保護者も同じです。多少のつながりはあったとしても、きっと高校へ行けば完全に切れてしまいます。中学校は中学校で、高校は高校で、各々腹々に部活動をするのは良いのですが、その道筋とは腹に並行してクラブが存在していると良いのではないかと思います。中学生の先輩が小学生を教える。小学生が中学生のプレーを見て勉強する。保護者同士が同じスポーツでつながっている。中学三年生が小学三年生の顔と名前がわかる、話ができる。高校生が中学一年生に大人のプレーを見せる。とても素敵なことだと思います。やはりそれが出来るのは「クラブ」だと思います。単なるOB・OGではなく、「僕達・私達は、同じクラブ員なんだ」。サポーター(保護者)も同じことが言えると思います。良い伝統を引き継ぐクラブとして」
ミニバスケットボール監督 近野 一志
スポーツ少年団と学校運動部活動がつながり、地域スポーツとして延長していくシステムを創りたい、これも総合型地域スポーツクラブのバリエーションの一つであろう。ただし、一つのクラブが孤軍奮闘するだけでは、なかなか成旺となって表れない。各地域の優れた素質を有する競技者を発掘するためには、地域レベルから中央レベルまでが一体となった全体像を示すことも重要である。広域圏内の総合型地域スポーツクラブをネットワーク化する広域スポーツセンターの育成、定着も我が国のスポーツの未来にとって欠かせない視点である。
スポーツは教育的な価値をもちろん有しているが、それと同時に社会の文化であるという意識に立てば、地域の中心的存在である学校が一層輝きを増すのではないか。
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