美術教育の内的な連関構造は美術教育者が築き上げてきたものであり、その世界の中では一定の正統性が与えられてはいるが、それはもう一つの別の世界、すなわち人びとによって生きられた美術教育(art education as lived)からかけ離れている。まず、こうした二つの世界の間の断絶を適当な方法によって計測しなくてはならない。
一つの世界──ブルデューの用語では「場champ 」──は、特有の価値を持ち特有の運動形態を持ち、したがって美術教育という「場」には美術教育特有の法則がある。しかしそれは学校という大きな世界を前提として成り立っており、その学校は社会や文化を前提として成り立っているのである。美術教育を内側から分析することによって美術教育の自律性を強化することができるが、社会・文化・学校という制約の中で行われているということを見えなくさせられ、勝手な言説を生み、いくらでも現実の世界から乖離してゆく危険性を持っている。
フランスの社会学者ピエール・ブルデューは一つの「場」の中の運動を記述することにより社会全体の問題と一人ひとりの人間の問題を同一平面内で分析するというダイナミックな社会学を提唱している。次章ではこのブルデューの社会学に沿って、美術教育の姿と内的構造を分析し、美術教育に携わる我故に見えなくなっている自明の論理を導き出すことを意図する。