以前、国体の開会式に漫才師のオール阪神巨人が来て漫才をやってくれた時、国体選手達があまりに簡単に笑うものだから、「えらい反応いいなぁ、何言うても笑いまんな」と言ってました。スポーツマンは一般に「ノリ」が良いと言われます。それは行動的、積極的な性格の人間が集まっているから、といった理由も考えられますが、それ以上に、スポーツ指導の過程で「反対」を許さない教育、いわゆる「イエスマン」を作り出している部分が多分にあるんじゃないかと私は思います。 例えば厳しい指導者の下で練習する選手が、1プレーごとに監督の顔色をうかがったり、指導者の発言に対して「はいっ!」しか言わないなど、「その場でどう振る舞うことが求められているか」を咄嗟に考えてしまうスポーツ選手は多いと思います。前述の漫才にしても、「彼等は笑わせてくれる」と、疑いを持たずに最初から笑う準備をして待っているから簡単に爆笑できる、ということなのではないでしょうか? これは集団によるスポーツ活動を効率的に行うためにはある意味必要な要素であり、下級生は上級生に従い、メンバーはキャプテンの指示に従い、チームは指導者の指導に従う、ということがとりあえずは求められることになります。だっていちいち「何で僕が球拾いをやんなきゃならないんですか?」とか、「その練習は僕はやりたくないです」なぁんてそれぞれが勝手に言いだしたら、組織だった効率的な練習なんてできっこないですよね。でも逆に従順さが強まりすぎて、「先輩の命令は絶対」だとか、「監督の言うことに逆らえない」なんてことになると、イジメやセクハラなどの問題にもつながってしまうわけで、そのバランスはなかなか難しいところでもあります。また、このスポーツ選手のイエスマン的性格、すなわち現状否定したり疑問を持ったりせずに、今ある状況にすぐ順応し、同じ方向に突き進んでしまう性格は、その団体の悪しき(あるいは意味のない)伝統がなかなか改善されないことの原因ともなっていますね。 こうしたスポーツ選手の現状肯定的性格が、実は「相手が自分たちより強いと一度思ってしまうとそれを自分の中でなかなか否定できない」つまり、勝てると思えなくなってしまう心の動きに少なからず影響を与えているのではないかというのが私の推測です。いわゆる格上の相手と対戦すると、たとえ接戦になったとしても結局は負けてしまう事が圧倒的に多い。(それでも「いいゲームが出来たよね」なんて接戦に持ち込んだことで満足しちゃってる事もすごく多いですよね) それ以上に、試合の最初から「負ける、所詮かなわない」モードになってしまい、いつも通りのパフォーマンスが全然発揮できずに一方的に負け、「一体何練習してきたんだ?」って思うことがすごく多いような気がします。つまり、「相手は自分たちより強い」→「勝てるはずがない」と最初から認めてしまい、そのイメージを否定することが出来なくなっちゃってるんですよね。だからたとえ新人チーム同士でも伝統校や例年の強豪校は、その名前だけで対戦相手に一歩リードした状態で試合に臨める有利さがあると言えます。その昔100m競争がしばらく10秒の壁を破れなかった時は、10秒なんて絶対切れないだろうと思われていたのに、一人が9秒台を出したとたん次から次へと9秒台が出たのも、固定観念の影響が結構大きいような気がします。 昔、私が弱小バレー部に所属していた頃、全国大会で強いチームを見て「すげぇ!」を連発していた私たちに先輩が、「そうやって、すごい!自分たちとは違う!って見るんじゃなくて、ミスした所とかを見て、あ、自分たちと同じじゃん。そんなに変わらないなって見るんだよ。」と教えてくれた事があり、なるほどなぁって思った記憶があります。確かに、すごい部分だけを見てしまうと、結局自分たちはかなわない、って思い込んでしまうけど、同じだと思ってみることで、近づける、追いつける、勝つチャンスも当然あるって思えるような気がします。何事も見方、考え方次第で変わるものですね。 だからスポーツ指導していく際にも、何も考えさせずにとにかく「はいっ!」と一方的に従わせるだけでなく、選手一人一人に考えさせ、「でもホントにそうか?こうしたらどうだろう?」としっかり判断させていくような場面を設けてやることもかなり大切なのではないでしょうか?・・以前テレビで見た強豪校の監督さんは、怒鳴る時に時々否定形も入れて、「本当に試合に勝ちたいと思ってるのか?」「はいっ!」「じゃあもっと大きな声出るだろ!」「はいっ!」「それとももうやめたくなったんか?」「いいえっ!」「じゃあ頑張れよ!」「はいっ!」「出来るか?」「はいっ!」「帰ってもいいぞ!」「いいえっ!」・・と、見事に瞬間的な「はい」「いいえ」の判断をさせていて、内容はともあれ、なるほどと感心しました。全国の強豪校指導者の皆さん、この辺から選手に自主判断させてみるっていうのはどうですか?そのうち選手の判断力がどんどん育ってきて、「監督、その練習では勝てないと思いますっ!いやむしろあなたが監督をしているから勝てないんだと思いますっ!」なんてきっぱりと指摘されちゃったりして・・。 |