その145 ■スノーボードの精神・・

 五輪の女子スノーボードクロス決勝レースでダントツ一位だった選手が、最後のジャンプで観客にサービスでグラブ(手で板を掴むパフォーマンス)して転倒し、結果2位になってしまいました。ニュースでは「やらなきゃいいのに」とか「バカな事しましたね」みたいなコメントや報道が多かったと思いますが、そうでしょうか?

 サーフィンを雪山に持ち込んだという発祥を持ち出すまでもなく、スノーボードは元々「遊び」の要素が強いスポーツであり、それだけに滑りの「スタイル」にこだわり、またそれを周りの人に「魅せる」要素も強いスポーツです。今回の女子スノーボードクロスで7位に入賞した藤森選手も「藤森選手にとってスノーボードは?」と質問されたときに、「『全てです。』なんて言いたくない。私にとってスノボは遊びだし、オリンピックもあくまで遊びの延長です」ってコメントしてます。そしてこの事件についても「でもスノボードの大会ってみんなで盛り上がる雰囲気があるので、ダントツだったら私もやっちゃうかも知れません」って感じのコメントしてました。また、種目は違いますが、男子ハーフパイプで優勝したショーンホワイト選手も、優勝が確定した後の2回目の滑りでは途中で演技をやめて最後はグランドトリック(ジャンプしないパフォーマンス)しちゃってます。これだって団塊の世代のスキーコーチあたりが見たら「最後までちゃんと演技しろよ!」って激怒しそうな事なんですが、スノボだと「ま、いいんじゃない?優勝決まってるし。」くらいのユルい感じで受け入れられるんじゃないかなと思います。(そういう意味では、スノボ競技の中でアルペン種目だけは、見ていて「ちょっとボードっぽくないなぁ」と違和感を感じてしまいますがどうですか?むしろあれはスキー競技に入れて、「モノスキーノンストック斜め乗り部門」あたりでどうでしょう?・・長い?ダメ?やっぱり?)

 今年度私の研究室で、スノースポーツをテーマに修士論文を書いた学生がいたんですが、彼のアンケート調査でも、スキーは上達していくにつれて滑りの質をストイックに追求していく傾向があるのに対して、スノーボードではある程度自由に滑れるようになると、その楽しみ方は一旦横に広がって、ジャンプしたりトリックしたり深雪を滑ったりしたりすることに楽しみを見いだすようになるという傾向が見られました。要するにスノボはいろんな事して遊びたいんですよね。だからスキーにとって「転ぶ」事は失敗ですがスノボで転ぶことは「遊び」になり派手に転んでも笑って楽しめる雰囲気があります。

 だから今回のこのパフォーマンス事件(?)も、「それがスノーボードなんです」ってスノボを良く知る人から言って欲しかったし、2位になってしまったこの選手も、悔しかったと思うけど出来れば号泣なんてしないで、「いやぁダントツだったんで、見に来てくれた人たちを盛り上げようと思ってついやっちゃいましたエヘヘ。でも別の意味で盛り上がったんで、ま、いいかなと思ってます。今後はジャンプとグラブをもっとしっかり練習して360°(1回転)を決めたいと思います。」なんて頭ポリポリしながら笑ってコメントして欲しかったです。でもそんなコメントしなくても彼女のサービス精神は、この五輪でのボードクロス第一回大会で地味に優勝して金メダル獲って記録に残るよりも、「これぞスノーボーダーのスピリッツ!」と全世界の人々の記憶に強く刻みこまれたんじゃないかと思われ、そういう意味ではスノーボードクロスという競技やスノーボードの歴史に残る偉大な滑り(パフォーマンス)をした選手として、彼女のサービス精神と勇気に「あの大事な場面でよくぞやってくれた!」「やろうとするその気持ちが素晴らしい!」ともっと称賛の拍手を送るべきだと私は思いますが、いかがですか?だって普通の人はなかなかやれないですよ、オリンピックの金メダルかかってたら・・。

その146 バッテリーを鍛える・・